親権不平等Blog

実子誘拐と共同親権について調べる、考える、書く

『ひとり親家庭』赤石千衣子著ーーーオンライン読書会の報告

ちょっと時間が経ってしまいましたが、2022年5月18日に開催したオンライン読書会の報告です。



https://jointcustodykansai.blogspot.com/2022/04/blog-post.html

 

赤石千衣子さん著『ひとり親家庭』(岩波書店)を取り上げました。

 

参加者5人で意見が一致したのは

「古い時代認識の本だった」という点でした。

 

この本の中では、いま話題になっている、「共同親権」「実子誘拐(拉致)」「子どもの連れ去り」「別居親の自殺」という現実は一言も書かれていません

 

単独親権という言葉は書かれていない書籍でした。

 

Kindleの電子書籍で、全文検索をしたとき、「共同親権」という言葉がまったくないことに驚きました。

 

同書では、社会的に、経済的に、孤立無援のシングルマザーの困難が縷々述べられていますが、その解決のために必要なのは「国からの支援」と 「NPOからの支援」、簡単に言うとそういうことが書かれてある。

 

そのシングルマザーが再婚する、あるいは、離婚した夫と交渉して、養育費をもらうなどの前向きな解決策は書かれていないんですね。

 

シングルマザーにもさまざまな人がいる、それくらいのことは、シングルマザーの当事者でない私にも分かります。



シングルマザーの支援団体の中にも、離婚した後に、元夫と話し合って、共同養育を進めていきましょう、という動きも出てきました。シングルマザーの経済的な自立、豊かなシングルマザーの生活を実現しようという動きも始まっています。

 

そういう新しい動きを知っていると、赤石千衣子さんの『ひとり親家庭』で描かれたシングルマザーは、きわめて悲劇的な存在として書かれています。

 

シングルマザー = 経済的自立が不可能な弱者

 

今、私たちは単独親権制度から共同親権制度に変わる時代の転換期

いわばパラダイムシフトの中にいます。



先進国のほとんどすべてが共同親権になっている。これが世界の常識なのです。

日本はこの動きから取り残され、孤立している、と言ってよい。

「ふぇみん」というメディアの編集長を経験された赤石千衣子さんが、そのことを知らないわけがありません。

 

日本も必ず共同親権になります。そうならなければ国際的な批判を浴びることはもう確定ですから。

 

そういう2022年で暮らしている立場で見ると、「ひとり親家庭」という言葉が政治の現場で語られている現状は、時代遅れであり、世界の動きから取り残されている、と思います。

 

この『ひとり親家庭』という言葉を作って日本中に広めた一人が、赤石千衣子さん、この岩波新書なんですね

 

本を読んでわかったこととしては「ひとり親家庭」では、シングルマザーの稼ぎだけでは、子供を大学に行かせる豊かな生活は実現不可能。

奨学金なしでは大学に行けない。(日本では、奨学金は借金です。)

ごく一部の裕福なシングルマザーがいるかもしれません。

すべてワンオペ育児をして、実家からの支援なしで、育児と子育ての両立をさせて、貯金をつくり、子どもたちに何不自由ない生活、高額の学費で知られる有名私立大学の学費もしっかり支払える。そんなシングルマザーは、例外中の例外でしょう。

 

『ひとり親家庭』という書籍は、シングルマザーの支援としては対処療法、絆創膏を貼るような内容の本になっていると言わざるを得ません。

 

ひとりの親だけの能力では、子どもに安全、安心、豊かな生活を保障することは無理、しかし、それしか選択肢はない、という書籍になっている。

 

その考えでは、シングルマザー当事者が、共同親権・共同養育の時代から、取り残されてしまう。

 

男も女も子育てをする時代になっている。そのなかで、「ひとり親家庭」の孤立を救うのは、共同親権・共同養育の制度化であり、その制度に基づいた、孤立したシングルマザーの数を減らす、貧困を減らすこと。

 

いま赤石千衣子さんは、法制審議会の委員として、養育費、共同養育、共同親権など、家族法の枠組みを変える重要な議論をする要職についています。しかし、法制審議会の議事録を読む限り、赤石千衣子さんは一貫して共同親権について後ろ向きの意見を述べています。なぜ、そのような意見になってしまうのか、その背景となる考えが『ひとり親家庭』に書かれてあります。

 

繰り返しますが、赤石千衣子さんの著作『ひとり親家庭』には、共同親権という言葉が書かれていません。なぜ書かれていないのか。また読み返したくなる一冊です。